古本屋の種類について

  古本屋の種類について書こう。 当サイト春ショでは、「新古書店」「町の古本屋さん」「堅めの古書店」「今時のお店」「専門店」などの言葉を使って、古本屋さんを表すことが多い。それぞれを解説してみよう。

一、新古書店
 「新古書店」は、ブックオフや古本市場、ブックマーケットのような、チェーン展開しているお店を言う。特徴としては、「バーコードのついた比較的新しめの本がメイン(二千年以降が中心か)」、「ジャンルはオールジャンルで本以外も扱う」、「駐車場を持つなど、郊外型が多い」等である。本が新しいのは、データベースをもとに買取りを行うから、バーコードからデータを問い合わせたり登録したりできる最近の本のほうが楽だから、と思われる。実際、バーコードのない本は即捨てられることもあるという。ひどい話だが、登録の煩雑さを思うと、合理的ではあるかもしれない(でも悲しい)。なので、そういう古い本を売るときにはおすすめしない。
 「郊外型が多い」と書いたが、都心でもときどき見かける。商業ビルの一階やショッピングセンター内などで、しかし都心だからといってハイセンスな本が増えたりということもなく、漫画や文庫が中心で、郊外型とあまり変わらない。むしろ、近くに大学や高校があれば教科書や参考書が見られる、場所によっては洋書が多い、など周辺環境のほうが影響を与えるようである。店が大きいと、品数が増えたり古着や家電が加わったりする。

こんな人におすすめ
・新刊や比較的新しい本、九十年代から最近にベストセラーになった本を探している。
・ついでにCDもチェックしたい(最近はレコードを置いているブックオフも見かける)。
・安さを狙う(せどり的な掘り出し物はおそらく(塵が積もるようなもの以外)ないと思うが、自分にとっての掘り出し物なら、本好きやよく通う人なら出会えるだろう)。

▽探し方 ブックオフなど、基本的にホームページに店舗一覧が紹介されている。

一、二、新古書店関連
 「新古書店」には近いところに「リサイクルショップ中心型」と「昔ながら新古書店」がある。順に見ていく。
 「リサイクルショップ中心型」はその名の通り、メインは古着や玩具、フィギュアなどのリサイクルショップだけれど、お店が巨大なので「新古書店」タイプの本も揃えています、というタイプで、たまに偶然買い取られたであろう新書版ビンテージ漫画があったり資料集系の本に思わぬ出会いがあったりするのが面白さである。値段は安めか、極端なプレミア価格が多い。ほかに、文庫や小説、実用書等を置いているお店もある。町のリサイクルショップよりは、郊外型の巨大店で古本をよく見かける。
 「昔ながら新古書店」は、広島なら「花いち古書センター」で、ブックオフなどの「新古書店」ムーブメント(九十年代後半からゼロ年代前半くらいか)以前にチェーン展開をしていたタイプのお店である。全国展開ではなく、中国地方とか東海地方のような地方内展開(十軒以下の店舗数)が目立つ。値段はブックオフより高めだが、古い本も扱う、地域性が棚に出ている、「新古書店」の入りやすさと昔ながらの古本屋さんの雰囲気が両立している、など良い点多数である。しかし「新古書店」ムーブメントにおされて、いま残っているお店は少ない。

▽探し方 「リ」は、「(場所) リサイクルショップ」で検索して、ホームページをチェックしてみると良い。「昔」は、「(場所) 古本屋」で検索して、「○○書店 『(場所)店』」という名前になっているのが、基本的にチェーン店なので、全国展開系でなければ、それがそうである場合が多い。「ブック○○」「○○堂」などの名前が多い気がするが、なんとも言えない。

二、町の古本屋さん
 「町の古本屋さん」に移る。当サイトでこの描写がされるときは、だいたい、新古書店ムーブメントより開業の古い、オールジャンルを扱うお店、を指している。特徴は、「八十年代~新刊くらいの本が多い(ただしプレミアものは少ない)」、「生活と密着した料理、アウトドア、小説等が多い」、「文庫と漫画が中心で、安め~普通くらいの値段」等である。この値段は、昔は安かったのだが(新刊に比べればほとんどの古本は安い)、新古書店が百円代の価格を常識にしてしまったので、最近は普通、ややもすると高い印象になってしまっている。このあたりは中古CDショップと似ている。
 高校生が放課後立ち読みしたり、おじいさんが時代小説を買ったり、地域密着の客層で、おそらく日本の古本屋さんにもっとも多い(あるいは多かった)タイプだろう。貸本屋から発展したお店もある。商店街など町の中心地や、住宅地のなかに多く、個人経営中心(おばちゃん、おばあさん、といった感じの店主をよく目にする)でもあるため、日本の高齢化、地方の人口減少とともに数が減っていくのかもしれない。
 プレミアものが少ないのは、たぶん古本を売る相手と買う相手が重なっているせいで、良くも悪くもベストセラーなど「普通」な本が中心である。なので、趣味の偏った私が「町の古本屋さん」を訪れるのは、探しものではなく、「古本屋」自体に惹かれている部分が大きい。実際買うのも、好きな作家の読んでいなかった本や気になった雑学文庫など、一期一会的な本が多くなっている。

こんな人におすすめ
・家や学校、職場の近くにある。旅行先にある(上にも書いたけれど、これからどんどんなくなっていくのがこのタイプだと思うから、興味があったら開店されているうちに一度訪れてほしい)。
・懐かしい古本屋さんに行きたい(古本マニアでない人が、「古本屋」と聞いてイメージするのはこの「町の古本屋さん」だと思う)。

▽探し方 「(場所) 古本屋」で検索して、「○○書店」「○○古書店」のような名前で、「(場所)店」でもなく、ホームページがない場合、そうであることが多い。アバウトだな~、でもそんな感じです。ストリートビューで外観を見るとなんとなく分かるかも。

三、堅めの古書店
 「堅めの古書店」は、大学の側で大学とともに育ってきたお店や、歴史ある街の商店街に見られるタイプのお店で、「黒っぽい本」と言われる、哲学や経済など文字の詰まった本が戦前のものも含めて並んでいることが多い。特徴は、「文芸書、思想書が多い」、「巻物や色紙、掛け軸等美術品も扱っていることがある」、「郷土史関連の棚があったりする」等である。かつてはこうしたお店が、その地方の文化発信地であったと思うのだが、私のような軟派な人間が増えてしまったためか店内に若者を見ることは少なく、おじいさんの店主が一人だったり、おじいさんのお客さんと話していたり、という光景が目立つ。
 一方で、目録販売や大学教授からの蔵書の買取り、市場での販売などの道があるのか(研究関連の本などは価値が高いので、単価が高いのかもしれない)、しっかり残っているお店も多くある。

こんな人におすすめ
 ・「黒っぽい」本に興味がある。
 ・学術系の本や昔の新書等で、探している本がある(このタイプのお店は、地域の古本屋さん同士のヨコのつながりを持っていることもあるので、尋ねてみるのもありかもしれない)。
 ・新古書店や町の古本屋さんにない本とも出会ってみたい。
 最後について、「古本屋さんの敷居が高い」と言うときは、このタイプを指して言われているのだと思う。たしかにじろっと見られたり私は経験はないが、怒られたりするようなお店もあるようである。
 ただ、変に騒いだり、本を乱暴に扱わない(上に鞄を置かない、とか、濡れた傘で濡らさない、とか、ずっと立ち読みしない、とか)限り、そうは怒られない(はずである)。理不尽な店主の場合はどうしようもないが、事前にググったりしてみれば、よほどのお店ははじけるだろう。私個人は、人間の「文化」や「知」という雰囲気を棚の前に立つと感じられて、自分のしょうもなさを考えたりもできるので、難しい本はあまり読まない(読めない)けれど、行くのが好きだし、新たな出会いを求めて行ってみる、というのもありではないか、と思います。

▽探し方 二の探し方と似ているが、こちらはホームページがよくある。お店の沿革が書いてあったりして勉強になる。ほかに、「全国古本屋地図」を見たり、これは地方のお店全般に言えることだが、職業別電話帳から探したりもできる。

四、今時の古本屋
 「今時の古本屋」に進む。ゼロ年代後半~十年代初頭くらいに盛り上がり(たぶん……)、現在も続いているタイプがこれである。「いまアツい」というやつである。特徴は、「古民家改装、コンクリート打ちっ放し、ビルの一室など、これまでの”古本屋”イメージとちがう内装や外観」、「二十代、三十代の若い店主」、「カフェ、ライブハウス、雑貨販売など古本屋以外の要素も取り込む」等だろうか。品揃えはセレクトショップ的な、店主の志向が反映されたお店が多く、写真、建築、美術などのアート系、映画、漫画、芸能などのサブカルチャー系、児童書、文学、インテリアなどのくらし系、と勝手に分類してしまったが、こういう感じの本を中心に、意図を持って棚が作られている印象が強い。
 フライヤーが置いてあったり、リトルプレスやインディーズCDなどの取扱いがあったりもする。『ポパイ』のようなカルチャー誌や旅行誌で紹介され、デートコースになっていたり、ケッ、ああ、すみません、いや、デートするのはかまいません、でも店のなかでまで手つなぐのってなんなんだよ、あっ、すみません、すみません、ごめんなさい。
 ほんとうに悲しい気持ちになってしまったが、手は自由につないでほしいものだが、まあ、お洒落で今時な雰囲気のお店が多い。私は心に「おたくやマニアの悪い部分」を抱えているので、こうしたお店の興隆には抵抗もあったのだけれど、実は品揃え的には趣味と重なっていて、気に入った本と出会えることも多いし、リトルプレスやZINEに興味を持ってからは特に貴重な場所にもなっている。すっきりしたスタイリッシュなお店もあれば、棚でジャンルが混ざっているカオスなお店もあり、と、とにかく店主の個性がお店に見えるのが、「今時の古本屋」のポイントかもしれない。

こんな人におすすめ
 ・古本にちょっと興味はあるものの、「新古書店」とか「町の古本屋さん」とかにはピンと来なかった
 ・店主の本棚を覗く感覚で本と出会ってみたい
 ・リトルプレスや小さなイベントなど、手作り系のものが好き

▽探し方 「(場所) 古本屋」で検索して、ちょっと変わった店名、横文字の店名の場合、これであることが多い。基本的にホームページ、ブログ、ツイッター、インスタグラムの複数、あるいはどれかで活発に活動されているお店が多いので、チェックしてみよう。

五、専門店
 はほんとうにそのまま、なにかのジャンルの専門店である。乗り物に関する本を集めたお店、演劇に特化したお店、など個性的な専門店が見られる神保町を筆頭に、都会に目立つタイプだが、漫画専門店とかは地方にもときどきある。やはりその分野の品揃えでは追随を許さないし、一方でほかの古本屋さんのように均一棚のあるお店も多いので、興味を持たないジャンルで、ちょっとした出会いを探すのにも良いかもしれない。

こんな人におすすめ
 ・お店の専門と自分の収集対象が合っている
 ・マニアの世界を感じて、新たな本との出会いを得たい

▽探し方 「(ジャンル) 古本屋」で検索する。「絶版漫画 古本屋」等。ネット専門で実店舗のないお店も出てくるので、実店舗を探している場合は「(ジャンル) 古本屋 (場所)」としたり、ページ紹介をよく読んだりする。

 と、駈け足で(だれが始めた言い方なのだろう?)見てきたが、なかなか一口に「古本屋さん」と言ってもその世界は多様なことを、感じてもらえたのではないかと思う。もちろん、これは私の分類であり、また、二と三の要素が両方あるとか、昔は二だったけれど店主が替わって四になったとか、これでくくりきれないお店も多々あると思う。あくまで、なんとなくこんな傾向があるなあ、という主観的な分類である。
 読んでみて、自分はこの「おすすめ」に当てはまるなあ、近所にあるあのお店はどれなんだろう、など思ったりしたら、ぜひ、探してドアを開けてみてほしいと思う。本というのは実際、とても良いものなのである。


[前] [次] [古書コラム] [トップページに戻る]
inserted by FC2 system