長い道 桜が咲いている。校舎には垂れ幕がかかっているが、別段式に関することではない。単に学校名だけが書かれている。空は曇ってしまっている。 「それで」 克文と顔を見合わす。なんとなく、恥ずかしいような気持ちがした。が、安雄はカメラに手をかけて、まるっきりもう、撮るつもりだ。仕方なく階段の前へと並ぶ。古い階段のせいか、角が取れかかっている。 「あれっ、指が入った」 克文が駆け寄っていく。同じようにして駆け寄って、肩越しに覗き込むと、肌色が上部を覆った二人の姿が、階段をバックに映っているのが、液晶画面に見えた。 「これでいいよ」と言った。 安雄が応えたが、克文も「顔に被ってないからいいじゃん」と言った。「そこに別に、隠れて困るものがあるわけでもないしさ」と続けた。 今度は、忍が見ていたほうを想像し、向き直って見てみる。なにもないような景色が、続いている。 |
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