自作短歌
タンタカタン


白い腹さかなの切身包装紙わたしのもとへ手渡されるかみ

車道からこぼれないよう仕切りおき少年はまた片足になる

私にはすべてがわかる指先に風が何度もぶつかることも


温かい車の席の窓からは電話をかけてまたかける人


住宅が建つのを待てる予定地に驟雨は落ちて山羊も濡れゆく


いますかと聞くよりは目で確かめてそのまま帰ったほうがいいよと

猿が来る意味があるのかそれともかわからないから笑っている


四時間を待つことにした席うごき窓際へ行くような思い


午後五時のフードコートで勉強す生徒は二人鞄を並べ


白壁のビル街歩道は空いていて春には春の花咲くものと

教会の鐘を一人で聞いている錯覚の中の神父の顔と

公園でサッカーをする少年ら三人揃って球と転がる


すぐに切る電話煙突下で待つ人へと宛てる声が似ている


書く度たまる澱のような下書き遠い発表はまだ遠い先

送迎の車待つ道南天の赤い実いくつ地上に落ちる


まとまりを壊して再度また作る鰐の口だけ可動している


絵の中の朝顔は真っ赤背景色のオレンジ


車中に窓外の風は吹かずエアコンから年を取る風

押して引く波音に似た蒸し暑さうだりの前を雀が飛び越え


俯いて歩く斜めに日を浴びて残るは隈に似た肌の色


夏のごと日射しに目を細めても瞼まで届く日射し

パソコンに吸われた時間掃除機のようにすぐには捨てられない


犬の足歯車のあるごと静か回転のなめらかからからからと


追いかけた猫路地裏に消えていくデジカメにある背中としっぽ

遠く響く野球部員のかけ声もわざとらしさのある夏に会う

山桜目立たない花弁一つ地面に落としてなんとか目立つ


重なった本の二番目小さいから三番目はたわんでる

悲しみは連鎖つづけて後悔の順を数えて意味を求める

やることのひとつひとつもかたづけず何も出来ない部屋は広い

崩落の本の並びに何も無きまま突然に溶けるような

観念に羽をもがれし太宰鶴今我の持つ観念もまた

ありふれた言葉はいらぬ我はならどこへ行こうかなにをしようか

静まった団地を割って犬吠える騒々しさは今消えている


早起きに本を開けば昨日から止まったままの頁が見える

花びらは散開しつつ湿り気を感じさせたり触らぬうちに

軽口の少年の声遠くから妙に響いて寂しさがある

青空にだいだい色の花びらを切り取るがごと満開の道

暖かさ上着一枚手にかけて歩く学生の肩重なる


耳かきに体起こせば棒のさき鼓膜とどきそうな春先

サイトにて短歌はじめし私には発表の場所があるということ

白ベニヤの板を見るよう日の光跳ね返している家のベランダ

辞書の中塚本邦雄この町で昔暮らしたことを知りたり

簡単に読める短歌はああこんなもの心は打たねど

メール多き夢見たあとに開く携帯きたるは一件ドコモメールか


短歌との出会い

 図書館で「短歌をつくろう」(さ・え・ら書房)という本をなんとなく借りました。しかし読みすすめ、ページをめくるうち、「これは面白いぞワトソンくん」と意欲がわき、そんなわけで、短歌をつくりはじめました。

 知識はその本と国語で習ったことくらいのすかすかなものですが、逆に「過去へとらわれぬ現代詩人の天衣無縫」みたいになるかもいやなりませんね(ダイジェスト)。


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