無恥の文章

VIPでテキストサイト企画 共通テーマ参加作品

 テキスト――文章等、書いてもつまらないと思うことがある。時には閉鎖したい、と冷めた思いを抱きもする。そもそも私達は何故「読む」という行為を取るのだろうか。私はこの「読む五つの理由」を挙げたい。

「文学的価値」
「面白さ」
「書いた人への愛着」
「話題性」
「他人の推薦」

 「文学的価値」は判りやすいものだ。例えば、何故多くの人志賀直哉を読むのかといえば、それは文学的価値に他ならない。勿論、話自体の面白さ、センテンスの巧みさを見習うために読む人たちもいるだろう。

 しかし、同程度の完成度が素人の作品に例えあったとしても、多くの人は志賀直哉を選ぶ。それは文学的価値の差から来るものだ。文学的価値のある作品を読むということは、読者自身の対外的イメージを上げるという面がある。簡単に言えば、ネットでテキスト読んだ、と志賀直哉読んだ、なら志賀直哉のほうが「頭良さそう」「すごい」であり、そのイメージを求める心が、一種文学的価値を高めていると言えよう。

 文学的価値をどうつけるかはそれぞれの人の自由だ。夏目漱石を頂点に置くか、森鴎外を置くか。また川端康成を置くか。それは人により違えど、例えば私の作品に文学的価値があるかということに関しては、一言「ない」である。

 「面白さ」。これは少し難しい。例えばライトノベルを何より面白いとする者がいる。一方で下らないと一笑に付す者もいる。彼等に対し、片方が間違っているとは言えない。「面白さ」というのは主観的なものだからだ。

 だから私はこれに期待してしまう。自分で面白くないと思ったテキストさえ、「誰かが面白いと思うかもしれない」と空虚な期待を抱いて放置し、手直しも削除もしない。はっきり言って、つまらないものはつまらないのだ。なるほど、「誰かが面白いと思うかもしれない」。それは可能性として確かに存在する。しかし所詮素人が書いた文章なのだ。

 今まで素人の文章を「面白い」と思ったことが何度あるだろうか。あるとして、それは本人がつまらないと思って書きあげたような文章か。答えは否。そんなことはないはずだ。作者が納得し、書きあげてこそ、それには一種の完成度が満ち、楽しむことが出来るのだ。よって筆者すら自信を持たない私の作品には、やはり当てはまらないだろう。

 「書いた人への愛着」が、面白さ、文学的価値を無視することがある。例えばアイドルのファンクラブ会報、ミュージシャンの自伝。それに文学的価値はない。面白くない場合も多い。「我が家の猫が云々」、「親との喧嘩の果てに家を飛び出す」。まったく退屈なものだが、アイドルのファンやミュージシャンのファンはそんな所を見ていない。

 ただ、彼(彼女)が書いた、という一点に価値があるのだ。もっと言えば、書いてなくても良い、本に彼(彼女)の名前がある――つまり筆者の価値が、文学的価値、面白さという価値を上回り、代替しているのだ。さて、私に愛着を抱くサイト閲覧者がいるか。名前を見ただけでページを開く読者がいるか。それは判らないが、つまらないものすら面白いと思わせる力はないだろう。

 「話題性」も根強い「読ませる」力だ。ベストセラーというのはそれだけで手に取らせる。「売れている」という事が、「売れるなら面白いんだろう」という気持ちを抱かせ、それは連鎖し、刺激しあって膨張する。勿論サイトでもそういった連鎖反応は起こりうる。侍魂の例は判りやすい。

 しかし、当たり前だが話題に上らせるには理由が要る。上三つの例にすら当てはまらないものが話題になるとは思い難い。よって私の文章が話題を起こす可能性はやはり低い(「炎上」という例がネットにはあるが、それは避けたい)。

 「他人の推薦」。「面白いよ」と人に薦められて読む気になることも多い。しかしこれもまた上の理由のどれかが「人」へ働きかけた結果だ。ならば同じ理由で、私の文章は否定される。まったくどうにもならない。

 「読む五つの理由」以外にも理由はある。例えば論文は面白くなくても、それにある知識、情報が読者を生んでいる。ただ、今回は「小説」や「一般のテキスト」に対象を絞ったため、除外した。その中で、私の文章が「読む」気にさせるものでないのがはっきりしてしまった。ただ、発信されているだけ。的に当たらない矢を射っているだけなのだ。

 もっとも、私の場合「VIPでテキストサイト」の企画に参加している。企画の中には「更新報告があれば必ず見る」という人が少なからずいる。だからとりあえずは、読者がいる。

 そう、私にとっては六つ目の理由、「組織の関係」が作用していたのだ。つきあいで読んでもらっている、とまでは言わないが、なんというか、もっと努力しないといけません。

 

 共通テーマが「恥ずかしい話」だったのを幸い、恥知らずにも「文章を書く、読む」ということについて長文で綴ってみました。感想はこうです。

恥の多い文章を綴ってきました。


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