私が小学生のころ、標語を作る機会があった。先生は「七五調」で作ると良い、と説明をしてくれた。私は先生に逆らわないタイプの学生であったから、もちろん七五調を意識して作品を作った。「いいまちは みんなあいさつ できるまち」とか「たのしいね げんきなこえで あいさつを」とかそういう類いである。実際の私は側溝の中を覗きながら帰ってあいさつなどしていなかったが、標語の中ではあいさつが大好きな子供であった。先生に見せると、「いいね」と言われた。私は喜んだ。採用はされなかった。
この点、先生は流石だな、と今でも思うが、ところで「七五調」はNHK教育のアニメ「ぜんまいざむらい」にも取り上げられている。俳句を知った主人公「ぜんまいざむらい」の会話が「あぁ暇だ だんごがあったら 食べたいな」と七五調になるというもので、「ぜんまいざむらい」のタイトルどおり、江戸が舞台のギャグアニメであったから、日本つながりだろうか、と考えていたのである。
ところが、四年前、NHK教育で始まった「はなかっぱ」というアニメにも「七五調」が登場した。展開もほぼ共通している。かっぱでこそあれ、日本的とは言いがたいアニメだ。しかし七五調は出現した。興味を持った私がさらに調べたところ、同様の挿話は「おじゃる丸」「天才バカボン」にもあると言う。登場人物たちはさまざまな舞台に立ちながら、揃って、七五調にはまっている。この事実が今明らかになったのだ。
これを「七五調症候群」と呼ぶこともできるだろう。そこで想像するが、日本語は七五調となじんでいるのではなく、あるときそう変えられたのではないか。例えば「こんにちは」はもともと、五文字ではなかった。それが七五調症候群によって、姿を変えたのではないか。かつて「こんにちは」がこうだったとしたのなら。
「こんにちは、さ」
文節なのか。