枕が変わると眠れない、と言うが、本当だろうか。実際は枕ではなく、旅行のストレス、環境の違いで眠れなかったことを枕のせいにしているのが大半であろう。
 むしろこの言葉から我々が学ぶべきは、「枕のせい」の精神である。あと反骨精神と、在野精神である、というのはうそであるが、旅行のストレスで眠れないことを枕のせいに出来るのならば、我々はもっと他のことを枕のせいに出来るのではないか。
 例えばテストである。昔、理科の先生がこう言った。「ここからここまでが、範囲。他からは出しません」。そう聞いたところで勉強をするわけでもなく、私は範囲を流し読みしただけでテストに臨んだ。もちろん結果は惨敗である。ただ、努力のない失敗は気にならないもので、「理科は苦手じゃけえ」と広島弁で誤魔化したりしていたが、後日先生に会った。

 「おう、お前、テスト悪かったなあ」
 「いや、そうですねえ」
 「お前、範囲以外からも出るんじゃないか、と思ったか」

 考えた。ここで「そうです」と答えれば、思慮深く慎重たる勉強家、と思ってもらえるのではないか。それに、「範囲だけと分かっていてその点数」と思われるのは(事実だが)「しゃく」である。

 「はい、範囲以外も、ね」
 「お前、アホじゃと思うぞ」

 面と向かって言われると停電したようなショックがあった。先生は真顔であった。あらせられた。というか「枕のせい」の話にまったく繋がらないではないか。どうしよう。仕方がないので、私は、ご隠居のところへ駆けていった。

 「こうこう、こういうわけなんです、ご隠居」
 「そうだな、一つ方法があるぞ」
 「さすがはご隠居。で、そいつァ……」
 「そのテキストは、まくらいりじゃな」

 

 オチがつまらないのも、枕のせいには出来ないだろうか。


[前] [次] [雑文] [トップページに戻る]
inserted by FC2 system