ブックオフのよろこび
本を売るなら

 「いらっしゃいませ」の声。画一的な棚。店員の黒や紺のエプロン。百円とそれ以外、という分かりやすい値付け。ずらりと並ぶ漫画本にCD――。それがブックオフである。ブックオフは一九九〇年に誕生した。それから二十五年が経ち、現在全国には千店近いお店がひしめいている。

 ブックオフはそれまでの古書店と大きく異なる「新古書店」のスタイルを生み出した。生み出した、と書いておいてなんだが詳細は省く。うぃきぺでぃあを見るとわかりやすいのでおすすめしたい。
 こういった新古書店に対して、いわゆる「古書ファン」の人たちから悪評を聞くことがあるが、私はあまり気にしない。旅行先でも通っている。好きなのだし、それに昔からの個人古書店で感じるのと同じ「本と出会うよろこび」はブックオフでも味わえると思うのだ。

 まあそれは置いて(ジェスチャー)。そんなブックオフの楽しみ方をあげてみたい。もちろん目当ての古書を探したり背表紙を一つずつ追ったりしても楽しいが、一風変わった、こんな楽しみ方もある、というのを並べてみよう。

◎売れそうにない本、CDを眺める
 例えば放送の終わってしまったドラマのファンブック。携帯の着メロコードを載せた新書本。すっかり見なくなってしまった芸能人の単行本。大量のシングルCD――。売れるのは遠そうだ。

 もっとも、世の中には「こんなモノ欲しがるのか」コレクターも存在する。古いラジカセや、鉄腕アトムシャンプーの空瓶など、そんなものを集める人もいるわけだ。ちなみにシャンプーの場合、中身入りさえ取引されている。四十年の時を経た中身。怖い。
 そんな世界もあるのだから、上で書いた商品に需要がないとは言い切れない。しかしやはり、「誰が買うのだろう」と考えてしまうことも事実である。

◎同じ本の値段ちがいを眺める
 同じ店舗で売っている同じ本の値段がなぜか異なることがある。状態もそう変わらないのにこっちは百、あっちは二百。そんなことになっている。そのアヤフヤ感がブックオフの醍醐味である。ほんとか。

◎やたらめったら古い本を見つける
 「新しい本が多い」。これはブックオフの基本であり、そもそも「古い」という理由で買い取り拒否することもあるという。まあ古い本を欲しがる人は少ないのだから、それも一つではある。

 が、それゆえ、たまに古ッ! な本を発見したときのよろこびは格別だ。私の守備範囲の話で申し訳ないが漫画ならサーキットの狼、ドーベルマン刑事など七十年代のものは見たことがある。新書でも同様だ。それ以前の六十年代となると、あまり記憶がない。前は見なかった文庫を近頃見るようになったので、そちらで六十年代本を見つけることがあれば、報告するつもりである。

*     *     *

 さて以上三つ、簡単にあげてみた。皆さんもブックオフで時間をつぶすときいかがだろうか。特に「売れそうに~」はオススメである。タレント本コーナーが分かりやすい。諸行無常を感じる。何店舗か巡って、棚の比較検討をするのも面白いだろう。

 ブックオフと言えば「せどり問題」にも触れるべきかもしれないが、今回は割愛した。そのうち書いてみたい。


 (16/3/21追記:私がブックオフに悪いイメージを持っていないのは、「ブックオフの台頭で個人店が消えていった姿」を体験していないことが大きいかもしれない。古本を集め出したときは、すでに個人店がかなり消えたあとだった。最近地元の古本屋さんの歴史を調べていて、90年代後半~00年代前半の新古書店隆盛と合わせて多くの個人店、地域チェーンが消えていったのを知ることができた。そのうえで考えると、「いわゆる古書ファン」の人たちが抱くブックオフへの苦手意識も少しわかったように思う)。


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