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6月の春日記


2015年06月01日(月)

 あるポイントカードを持っていません。が、それを使う店にはよく行くため「お持ちですか」と聞かれます。

 毎度「ありません」と返すのも大変ですし、ひとつ制作いたそう、と思いましたが、どうやらその店で発行はしていない様子。

 となると、ポイントカード鍛冶屋の出番です。ガラリ「頼もう」。親方はこちらを一瞥し、軽くはにかんでまた鉄へと向き直る。正確な響きがあたりを満たす。やがて、親方は銀に光るポイントカードを――。

 「職人ポイントカード」がほしいなあ、と思います。

2015年06月02日(火)

 電気店を通りかかると、リクライニング・チェアでおじさんがこれでもか、とくつろいでいます。体を横にし、見上げるようにスマートフォンを操作中です。

 ははあ、と思って本屋へ行きました。ある本を探したものの見つかりません。店員さんに聞くと、取り寄せになる様子。考えることにして、その場は帰りました。

 また電気店の前を通り、まだ、あのおじさんがいたのです。相変わらずの姿勢でくつろいでいます。これは、何分くらい経っているのか。
 むしろ、なにが起こったとき、おじさんは立ち上がるのか。

2015年06月03日(水)

 車に乗っていると、白いものが見えました。犬かな、と見れば、ヤギです。ヤギ。

 すぐそこが山ではあるものの、平凡な団地の一角に「野生」は考えにくく、となると誰かのペットということとになって――。ヤギは飼えるのか。

 調べたところ、大型犬程度の大きさで、しつけが可能なヤギも中にはいるそうです。そういうヤギの一種だったのかもしれませんメー。メーて。

 しかし雨に打たれて佇むヤギ、はなかなか風流でした。

2015年06月05日(金)

 ごみ箱の蓋に、「必ず飛ぶのでよろしく!」とありました。

 おそらく、「(きっちり閉めないと、)必ず(風で)飛ぶのでよろしく(お願いします)!」だと思いますが、なんという省略を。

 普通は「きちんと閉めてください」や「開放厳禁」なのが、これは「よろしく!」だけでした。まあフレンドリーというか、むしろ閉めたくなる気がしないでもないです。

 しかし、いつか「飛んだのでさよなら!」になる気配もあるのでした。

2015年06月06日(土)

 サインによって契約が成立するとき、「サインをもらえるかどうか」の戦いになります。これを少し変えて、「ピースをしたら成立」ではどうか。

 絶対ピースはできない、と考える社長。あの手この手でピースさせようとする社員。突然、「はいチーズ」と言ってみたり、二人連れのときに「何名様ですか」と尋ねてみたりするのです。

 が、粘る社長。見かねて娘が言います。「お父さん、ピースしてあげたら」「いやだ」。

 「じゃあ、プリクラのコツは」「顔の横でピース、はっ」。 小顔効果です。

2015年06月07日(日)

 チョコレートを求めて、売り場を見ました。「カカオ95パーセント」があり、「そういや、カカオて、なんか体にいいんですよね」と買ったのですが。

 苦い。

 もちろん「カカオが強いと苦いぜ」なのは聞いていたものの、こんなに苦いとは思いませんでした。「山をなめていた」とあるように、「カカオをなめていた」のです。普通のことになりましたけれど。

 そしてまだ、十粒が残っていて――。

2015年06月08日(月)

 階段の途中に、ものがあるから取ってきて、と頼まれたのです。

 早速、階段へ行って見下ろしてみると、これというものがありません。仕方なく、降りていくとやがて中間地点へ差し掛かりましたが、まだなにもないのです。

 異次元空間へ来てしまったか、と、さらに降りると、見つかりました。下から一段目です。

 なにが途中かっ、と階段で思いました。

2015年06月09日(火)

 「ポンジュース」を買ったとき、「ポン――ジュースー」とコマーシャルのタイトルコールを真似していたのですが、気がつくと、周りでそんなことをしているのは自分だけです。

 となると、どうして始めたのか。周りの誰かがやっていた場合、「うつった」で済むものの、そうではありません。果たして。

 考えられるのは、「最初、軽い気持ちでやって、受けたから」。

 よく、受けた駄洒落をくりかえしつづける子供がいますが、似ています。

2015年06月10日(水)

 YMOを聞こうとレンタルショップへ行ったのですが、以前来たのが五年前で、勝手がよくわかりません。

 棚も「洋楽・邦楽」くらいかと思えば、「懐かしの歌謡曲」「日本のロック」「洋楽」「アニメ」「声優」「ロック・ポップス」という状態で、もうなにがなにやらの細分化です。

 あちこち探し回ったものの、どの棚の「い」にも、YMOがなく。やがて気づき「わ」に行くとありました。やはり、ね。推理どおりです、ははは。

 そこで、満足してしまったので帰りました。

2015年06月11日(木)

 先月まで、とある本を読んでい、持ち歩いて、順調にページを繰っていましたが、あるとき、鞄から出してしまいました。
 すると、全然読まなくなったのです。鞄にあるかないかがこんなに読書を左右していたとは。「探してまで読む」やる気はどこへ。

 そして思ったのが、難しい本を持ち歩けば読めるかも、ということで、「鞄にある」なら、自然と読んだりできるかもしれません。

 早速、難しい本を鞄へ入れたところ、難しい本は鞄と一体化していったのです。

2015年06月12日(金)

 「しゃっきりしないとな」と寝る前に思いました。

 しかし「しゃっきり」とは。時代劇で、刀をひっくり返すとき「しゃきん」ですが、関係がないです。辞書を見ると、気持ちなどがしっかりする、歯触りがよい、を指すらしく。

 たぶん私は前の意味で使ったはずですが、まさかの後者が。「歯触りよく、ならないとな」。そう思ったのだとしたら。したらて。

 というか、寝る前に思うことか、という感じです。

2015年06月13日(土)

 コンビニで豆乳を買うと、九十八円でした。

 ぱっと支払おうとしましたが、なぜか出したのは十円玉。「八」のイメージが頭へ残っていて、手が動いてしまったのです。
 慌てて十円玉を引っ込め、百円玉に変えました。我ながらなにをしているのか。

 見ると、店員さんに、「えっ、あ、なるほど」と事情を読み切られており、なんだか、あちゃあ、とレジで思いました。

2015年06月15日(月)

 「もしもし亀よ、亀さんよ」とありますが、実は「うさぎから亀」ではなく、「亀からうさぎ」の歌ではないか。

 自分にさん付けが気になるものの、「私メリーさん」と似たものだと思います。つまりは、こうです。

 「もしもし私亀。亀さんよ。覚えてる。そういえば世界のうちで、あなたほど、歩みの遅い人ていないわよね。どうしてそんなに遅いのかしら。え、なんとおっしゃったのうさぎさん――」

 よく喋る亀さんです。

2015年06月14日(日)

 荷物で手が塞がっていたのに、届いた封筒を見て、取ろうと思ったのです。

 ドアの鍵を先に開け、荷物を下ろし、封筒を取る、などすればよかったのですが、面倒だったので、よ、ほ、と指を駆使してみました。

 「あっ」

 封筒が落ちます。急いで拾おうとすると、今度は腕へかけていた鞄が地面に着きました。
 一つの面倒がさらなる面倒を。焦燥の玄関先です。

2015年06月16日(火)

 インターネツトで買ったCDが届きました。箱へ梱包されています。開ける瞬間を心待ちにしながら、ほかのことをしていると、家族が先に開けていました。

 家「変なCD」

 なんということか。考え抜いた箱の開け方も意味がなくなってしまいました。うぅ。

 それでも聞ければいいか、と封を切っていたところ、夕食になり、それが終わったとたん、用事を思い出し、済ませたら今度はメールが襲来、ということで、結局その日は聞き損ねました。

2015年06月17日(水)

 看板に「バカ」とあり、思わずよく見ると「ゲンバカンリ」でした。
 知りませんでしたが「現場管理」の中には、「バカ」があったのです。バカンスやバカルディと通じます。

 もし「バカ」をとると残るのは「ゲン」と「ンリ」で、ゲンは、ゲンをかつぐ、に違いありません。「ンリ」はきっと「もうンリ」です。「無理」がさらに進むと「ンリ」です。たぶん。

 現場管理は、「ゲンをかつぎ、仕事バカになり、『ンリ』と思っても成し遂げる」。一見まとまったものの、結局「ンリ」、という。

2015年06月18日(木)

 江戸の町は寝静まって、娘の提灯だけが光っている。娘は後ろを振りかえりながら、足を速める。

 「やい待て、お市。縄に着けっ」、前方の角から男が飛び出して叫んだ。

 「やれやれ、見つかったら仕様がないね」。娘はそう言うと、おもむろに地面を掘りはじめる。男が奇妙な顔をして見ていると、埋まっていたのは短刀である。あっと思う間もなく短刀が男を狙った。

 「こ、これが『掘り出し物お市』か」

 江戸時代に「掘り出し物市」があったのかは微妙です。

2015年06月20日(土)

 畑に微動だにしないカラスがいて、置物でした。
 そういえば、玄関先に「やたらリアルな犬の置物」のある家が、あります。私はあれを見ると、びびってしまうので、なんとかならないものか。

 いわゆる「人工模型」「マネキン」「本物の犬」は大丈夫なのに、なぜか「やたらリアルな犬の置物」はいけません。毎回すっと、体が引きます。

 「やたらリアルな犬の置物パーク」などがあったら、きっと朝から引き通しです。

2015年06月21日(日)

 最近朝が遅く、早寝早起きに戻そう、と昨日思いました。

 準備も済み、寝ませう寝ませう、としたところ、「新・情報7days ニュースキャスター」が始まりました。気がつくと、一時間経っていたのです。あれ。

 ともあれ、そこで寝よう、とテレビをEテレにして、消そうとしたところ、「ETV特集 洒落が生命 ~桂米朝『上方落語』復活の軌跡~」をやっており、気がつくと――。

 起きたのは朝八時でした。

2015年06月22日(月)

 「図説 江戸東京怪異百物語」を持って座っていました。横に男性がいて、なにやらこちらを見ています。なんだ、と身構えると、突然です。

 「あの」
 「は、はい」
 「この字は、かいい、て、読む、んですよね」

 男性が「怪異」を指さしました。
 「え、はい――たぶん」

 男性は頷いて前を向きましたが、私は「かいい」で正しいのか、どんどん不安になっていきました。

2015年06月23日(火)

 広告でお医者さんが効能を説明していますが、注意書きがありました。
 「実際の医師ではありません」

 つまり、白衣や眼鏡姿の「俳優」ということで、そのほうが下手すると「お医者さん」らしいのかもしれません。ステレオタイプの世界です。

 先日も、新聞の広告に、お医者さんがい、私はまた「実在の」表示を探してみました。わかったのは、そのお医者さんは、ダチョウ倶楽部だったのでした。

 狐に化かされたような気持ちです。

2015年06月24日(水)

 ビルの入り口に、置かれた大量のスリッパ。どれもビルへ入る向きです。

 もしも靴ならば、スリッパに履きかえたんだな、と予想がつきますが、スリッパの場合謎が残ります。スリッパの先にはなにがあるのか。

 私の知らない「ススリッパ」などが存在し、みんなそれを使っているのかもしれません。ススリッパ。「煤は立派です。煤にまみれて働く姿が、高度経済成長を支えたのです」

 機関車の汽笛が一声、雲を割るように響き、乗客は皆、ススリッパを履いています。

2015年06月25日(木)

 広島では「テレ東」が映らないので、民放は四局見られますが、昨日一つ目をつけると、食レポをやっていました。二つ目に変えると、食べ尽くし、を放送中です。

 三つ目もなにか食べもの番組で、四つ目をつけると、今度はお見合いをしていました。民放四局中、三つが食、一つがお見合い。この選択肢のなさとは。

 仕方なく適当に一つを見ていると、ドレスの話に変わり、もしかしたら、このドレスも食べるんじゃないのか、と思いました。うそです。

2015年06月26日(金)

 車に乗ると性格が変わる、と言ったりし、それが犬の散歩なら。

 「おらおら、ポチのお通りだ」

 そう叫びながら、散歩をしているのです。さらに「飛ばせ飛ばせ、ポチ!」「抜かれたら抜きかえす」「アクセルを急に入れる」があり、――アクセル。

 しかし、ひとたびリードを離せば、温厚な普段の彼です。離されたポチは勝手に走りだしますが、「こらこらー」とあくまで彼は温厚なのでした。

2015年06月27日(土)

 家族からメールが送られてきました。

 「711のところにいます」

 え。それは727化粧品みたいなものか、そんなものあったかな、と思っていると、というか、私以外みんなわかっておられる気もしますが、セブンイレブンのことでした。

 十分ほど気づくのにかかったため、「あっ、セブンイレブンだ!」と大喜びしたものの、なんというか、我ながら鈍いのが治っていません。

2015年06月28日(日)

 「引き抜きにくい釘」という早口言葉がありますが、だいたいの釘は引き抜きにくいと思います。

 そう楽に引き抜けては、いけません。釘を打った木をさかさまにしたら、ひゅるっと釘が落ちてくる、とか困るわけです。

 ここは、「どちらかと言うと、引き抜きにくい釘」「個人的に、引き抜きにくい釘」「引き抜きにくいよう、えーん」などを使うと、安心できます。たぶん。

 「勇者以外には、引き抜きにくい釘」となると、やりすぎです。

2015年06月29日(月)

 帰って行く人たちで、ホールそばの階段は混雑していました。横幅の長い階段ですが、ざわざわと人が集まっています。

 そこに、二人の女の子がいました。立ち止まっています。目を留めて見ていると、二人はじゃんけんを始めました。まさか、と思っていると、勝ったほうが少し進み、そしてまたじゃんけんです。

 グリコではないか。人のごった返す階段で、グリコ。

 そんなに邪魔になっていなかったところに、グリコの可能性を見ました。

2015年06月30日(火)

 車が好きなので、「キューブ」「セリカ」「アルシオーネ」と見た車は名前が思い出されます。
 一方で、犬なんかはポメラニアンでもコーギーでも「犬だ」しか、出てきません。

 そこからわかるのは「知っている人は、名前に詳しい」、という事実です。

 さて、宇宙人が言います。「人類の皆さん、始めまして」。が、これは変ではないか。なにしろ宇宙人も呼びかける前に、いろいろ調査をしたはずで、つまり「知っている」側です。

 となれば「名前に詳し」くなるのが道理ですから、「日本の皆さん」「広島県の皆さん」と、こうなる可能性が高い。また、「そこの米屋の息子の三平さん、始めまして」では、侵略もあり得ます。

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